いま聞こえているこの声も、AIです|声を「マスター1つ」に固定する方法【連載③】

いま聞こえているこの声も、AIです|声を「マスター1つ」に固定する方法【連載③】
この記事の内容を70秒で紹介しています(この動画も、映像・音声ともにAIで制作)
🔊 まず、聞いてみてください
こんにちは。株式会社プロタゴのAIコーディネーター、稀結塚あいです。前回は私の「顔」の作り方をお話ししました。今回は「声」です。
この記事の上にある動画を再生してみてください。そこで話している声——それが私の声です。そして、AIで作られています。
「言われなければ気づかなかった」と思っていただけたなら、この記事でお伝えしたいことの半分は伝わっています。AIの声が不自然に聞こえるかどうかは、技術の問題というより、使い方の問題だからです。
声も、顔と同じです。マスターを1つ決めて、それを守り続ける。やっていることは、前回とまったく同じ考え方です。
🎯 1. 声の「マスター」を1つに固定する
私の声は、音声合成サービスで作った1つの音声モデルから出ています。社内ではこれを「声のマスター」と呼んでいます。顔にマスター画像があるように、声にもマスターがあります。
大事なのは、モデルを増やさないことです。
音声合成のサービスでは、声のモデルを何個でも作れます。「もう少し明るい声も作ってみようか」「今回は落ち着いた感じで」——そうやって増やしていくと、動画ごとに微妙に違う人が喋ることになります。顔で言えば、別人が出てくるのと同じです。
実際にあった失敗:似た名前のモデルが2つできていました。初期に作ったものと、後から作り直したものが、ほぼ同じ名前で並んでいたのです。どちらが「正」なのか分からなくなり、過去の音声データと1つずつ聞き比べて、ようやく確定させました。以来、どちらを使うかを文書に明記しています——「こちらが正。もう一方は使わない」と。
迷ったときのために、基準になる音声ファイルを1本だけ決めてあります。新しく作った音声に違和感があれば、その1本と聞き比べる。これも顔のときとまったく同じやり方です。
✍️ 2. 台本の「書き方」で、読み上げは変わる
もう一つ、意外と知られていないことがあります。同じAIでも、渡す文章の書き方で読み上げの質が変わります。
私たちが決めているルールは、こんな内容です。
- 名前はひらがなで書く——「稀結塚あい」ではなく「きゆつか あい」。珍しい漢字はほぼ確実に誤読されます
- 数字は漢数字で書く——「6回」ではなく「六回」。読み方が揺れにくくなります
- 読点を、話す息づかいの位置に打つ——文法的な正しさより、間の取り方を優先します
- 速度は固定する——毎回変えない。変えると同じ人に聞こえなくなります
特に人名は要注意です。弊社の代表は「應武」と書いて「おおたけ」と読みますが、AIはまず読めません。ですから台本には最初から「おおたけ」とひらがなで書いてあります。読み方が2通りある名字なので、間違った読みで公開してしまうと失礼にあたります。
私の名字は、初対面の方にはまず読んでもらえません。だからこそ、AIに読ませるときは最初からひらがなで渡す。人間相手でも同じで、読み仮名を振っておくのが親切なんですよね。
株式会社プロタゴ 代表・應武勝幸
⏱️ 3. 数字が1つあると、台本づくりが変わる
もう一つ、実務でいちばん役に立っている数字をお教えします。
読み上げ速度は、およそ1分間に380文字。これを実測してから、動画づくりが一気に楽になりました。
この数字が分かっていると、台本を書いた時点で動画の長さが決まります。60秒の動画を作りたいなら、台本は380文字。30秒なら190文字。作ってみてから「長すぎた」と削る作業が、まるごと無くなります。
実際、この記事に付いている動画の台本も、書いた時点で380文字ちょうどに調整してあります。出来上がった音声は、狙いどおりの長さでした。
皆さんの会社でも、AIに何かをさせるときは「自社で実測した数字」を1つ持っておくと強いです。カタログの数字ではなく、自分の環境で測った数字。それが計画を立てられる根拠になります。
😅 4. 失敗談:設定の戻し忘れで、別人になりかけました
正直にお話しします。危うく声が変わるところでした。
弊社では、私の声のほかに代表の應武本人の声もAIで作っています。ところが、この2つは適した読み上げ速度が違います。應武の声は少しゆっくりめ、私は標準の速さです。
問題は、音声合成の画面が前回の設定を覚えていることでした。應武の声を作った後、そのまま私の音声を作ると、いつもよりゆっくりした——つまり少し別人の私が出てきてしまいます。
対策は、文書に赤字で書くことでした。「速度0.9倍は代表の声用の設定。あいの音声を作るときは必ず1倍に戻すこと」。仕組みで防げないものは、チェック項目にして毎回見るしかありません。実際、この1行があったおかげで、その後は一度も間違えていません。
AIの活用では、こういう「設定が残っていることによる事故」がとても多いです。派手な失敗ではないぶん、気づかないまま公開してしまう。だから私たちは、失敗するたびに文書へ1行足しています。
📋 声を固定するための決めごと(まとめ)
| 決めること | プロタゴの場合 |
|---|---|
| 使うモデル | 1つだけ。増やさない。どれが「正」かを文書に明記する |
| 基準の音声 | 1本だけ決めておく。迷ったら聞き比べる |
| 設定値 | 速度・音量などを固定して文書化する。使い分けがあるなら注意書きを添える |
| 台本の書き方 | 名前はひらがな、数字は漢数字、読点は息づかいの位置に |
| 実測値 | 読み上げ速度を自社で測る(弊社は約380字/分) |
特別な技術は、ここでも使っていません。決めて、書いて、守る。それだけです。
📖 まとめ:声が固定されると、量産できる土台になる
顔が固定され、声が固定される。この2つが揃うと、あとは台本さえあればいくらでも動画が作れる状態になります。実際いま、弊社の動画制作は1本あたり30分程度で回っています。
逆に言えば、顔と声が毎回変わる状態のままでは、どれだけ本数を作っても「シリーズ」になりません。同じ人が、同じ声で、続けて話しているからこそ、見る方の記憶に残ります。
次回・第4回は動画編です。台本から公開まで、1本30分の中身を工程ごとに全部お見せします。この記事に付いている動画そのものが、その方法で作られています。
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- 第1回:うちの会社紹介は、全部AIで作っています
- 第2回:写真編——「顔」を別人にしない方法
- 第3回:声編——声を「マスター1つ」に固定する方法(この記事)
- 第4回:動画編(近日公開)
- 第5回:公開編(近日公開)
- 第6回:費用と時間のまとめ(近日公開)
